任意後見契約公正証書

①任意後見契約

Q1 今はしっかりしていますが,歳をとって身体に自信がなくなり,認知症も心配になるので,親戚の人に生活の援助をしてもらいたいときには,どうしたらよいですか。

A1 任意後見契約を結ぶことが考えられます。この契約は公正証書で取り交わさなければなりません。

 

Q2 任意後見契約とは,どんな契約ですか。

A2 本人が信頼できる方を見つけ,その方との間で,もし本人の判断能力が衰えてきた場合には,本人に代わって,本人の財産を管理したり,必要な契約を結んだりしてくださいとお願いし,これを引き受けてもらう契約です。本人の判断能力が衰えた状態になったとき,引き受けた方は,本人の同意を得て,家庭裁判所に後見監督人の選任を申請し,後見監督人が選任されたときから,任意後見人として仕事をすることになります。

 一例を紹介します。

 将来型任意後見契約 代理権目録(任意後見契約)をdownload。

 

Q3 任意後見契約に必要な書類はどんなものですか。

A3 本人(委任者)の印鑑登録証明書,実印,戸籍謄本,住民票,引き受ける方(受任者)の印鑑登録証明書,実印,住民票です。

 任意後見契約に必要な書類及び費用等は「任意後見」をdownload。

 

Q5 パートナーシップ証明に関する任意後見契約公正証書・合意契約公正証書を作成することはできますか。

A5 できます。

 任意後見契約については下に紹介している例を参考にして内容を決めてください。

 合意書はどういう内容にしたいかを当事者で話し合って決めてください。

 なお、渋谷区のパートナーシップ証明制度に関しては「渋谷区パートナシップ証明」をご覧ください。

 

 ②委任契約+任意後見契約(移行型)

Q1 本人の判断能力はあるが,身体が悪くなり,車椅子の生活になった場合,任意後見人に財産管理をしてもらえないのですか。

A1 その場合,委任契約を結んで財産管理をお願いすること,任意後見契約と同時に委任契約を結ぶこと(移行型任意後見契約)ができます。

 

Q2 委任契約の委任事項は,財産管理全般ですか。

A2 本人の判断能力がある状態である上,受任者の権限乱用の危険を考慮し,委任の範囲は限定できます。預金取引を特定口座・特定金額に限定し,重要な財産の処分には本人の同意書が必要であるとしたり,保険会社・証券会社との契約を委任事項から排除することなどもできます。

 

Q3 委任契約の効力発生時期はいつですか。

A3 契約締結と同時に効力が発生する契約だけなく,本人(委任者)が引き受けた方(受任者)に通知したときから効力が発生する契約もあります。

 

Q4 引き受ける人は一人ですか。

A4 複数の人に引き受けてもらうことができます。複数が同時に又は順次契約することができます。複数の人が各人単独で仕事ができますが,共同でしなければならないとする契約もできます。Aが引き受け,予備的にBが引き受けるという契約はできません。

 

Q5 移行型の第1段階の委任契約の委任事項の例を教えてください。

A5 財産の処分を除外した例を紹介します。

 代理権目録(委任契約)をdownload。

 上記は,預金取引を限定し,保険契約・証券取引を除外する例です。預金取引を限定しないが,「受任者は,委任者から預貯金通帳と銀行印等を預かった場合,委任者に対し,一定期間ごとに本件委任事務処理の状況(預金残高を含む。)につき書面で報告する」とする例もあります。

 

Q6 移行型の第2段階の任意後見契約の委任事項の例を教えてください。

A6 代理権目録(任意後見契約)をdownload。

 

Q7 移行型契約の委任事項以外の内容の例を教えてください。

A7 一例を紹介します。

 移行型(委任契約+任意後見契約)をdownload。

 受任者の権限乱用の危険を考慮し,委任契約につき監督者を置く例もあります。

 監督者条項をdownload。

 

Q8 母は高齢で身体が不自由になっていますが,判断能力はあります。母が,母名義の土地建物を売って老人ホームに入りたいと言っていますが,移行型任意後見契約をすればよいのですか。

A8 移行型任意後見契約の委任契約では,不動産等重要な財産の処分を権限から除外することが多いでしょう。特定の土地建物の売却については,お母様との間で委任契約書・委任状を取り交わす方がよいでしょう。

 

Q9 任意後見人の報酬,任意後見監督人の報酬はどのくらいになるのですか。

A9 任意後見人の報酬をどうするかは当事者の合意次第ですし,任意後見監督人の報酬額は家庭裁判所が本人の財産状況を見て決めます。

 なお,東京家庭裁判所の成年後見人等の報酬額のめやすは参考になるかもしれません。

 

③死後事務委任

■ (死後事務委任の相談)

Q1 委任契約の受任者や任意後見人に,葬儀,火葬,埋葬,公租公課・公共料金・介護費用・入院費用等の支払や遺産の整理等,本人の死後のことを行ってもらうことはできますか。

A1 委任契約・任意後見契約は本人の死亡により終了しますから,やってもらうことはできませんが,死後事務委任契約を結んでおけば,やってもらうことができます。

 

Q2 死後事務委任契約の例を教えてください。

A2 一例を紹介します。

 死後事務委死任契約をdownload。

 

Q3 死後事務委任契約だけを締結することはできますか。

A3 できます。ただし,戸籍法87条2項により任意後見人・任意後見受任者は死亡届をすることができますが,死後事務委任契約だけを締結した受任者は任意後見人ではないので死亡届をすることはできないことになります。

 

④留意点

Q1 任意後見契約について頭に入れておかなければならないことがありますか。

A1 任意後見監督人が選任されない場合がありますし,解除や登記に関しての留意点があります。留意点は「留意点メモ」をdownload。なお,「本人に対して訴訟をし,又はした者」は任意後見人になれませんが,「訴訟」には「調停」含まれません。

 

■ (金融機関との対応)

Q2 任意後見人が金融機関で円滑に事務を行うにはどうすればよいですか。

A2 金融機関への任意後見開始の届出が必要です。金融機関では届出の定型書式を用意しています。届出には任意後見登記事項証明書の提出も求められています。

 

Q3 移行型(委任契約+任意後見契約)の委任契約の受任者(代理人)が金融機関で円滑に事務を行うにはどうすればよいですか。

A3 移行型の委任契約に当たっても代理人届等を要求している金融機関がありますので,確認が必要です。早めに取引銀行に赴き,受任者に代理権限があり,交渉する権限があることの理解を得ておくと円滑にことを進ませることができます。委任契約の代理権目録に金融機関名を記載することも有効です。任意後見登記事項証明書を提出し,委任契約が継続していることを明らかにすることも有効です。

 

■ (解除)

Q4 移行型任意後見契約を解除する場合どうするのですか。

A4 委任契約の段階・任意後見監督人選任前の段階で解除する場合,一方的解除と合意解除の場合がありますが,これらは,公証人の認証のある書面によって解除することになっています。

 解除合意書例は「WORD」をdownload。

 一方的解除は内容証明郵便によって相手方に通知し,配達証明を得ます。

 解除通知書の例は「WORD」をdownload。

 内容証明郵便については,内容証明HPをご覧ください。

 配達証明については、配達証明HPをご覧ください。

 解除後,終了の登記申請をすることになります。

 申請については法務局HPをご覧ください。

 

Q5 任意後見監督人選任後に任意後見契約を解除する場合はどうするのですか。

A5 家庭裁判所の許可が必要です。

 

■ (任意後見監督人の選任)

Q6 任意後見監督人の選任の申立てはどうすればよいですか。

A6 委任者の判断能力が不十分となったら,受任者は,その旨の診断書を添えて,委任者の住所地を管轄する家庭裁判所へ任意後見監督人選任申立書を提出します。

 裁判所HPをご覧ください。

 任意後見監督人選任の申立てをお考えの方々へをご覧ください。

 

■ (登記関係)

Q7 登記の手続について教えてください。

A7 本人・任意後見人の氏名,住所,本籍等に変更があった場合,変更の登記の申請をします。

 任意後見契約を解除した場合,任意後見監督人選任の前後を問わず,終了の登記の申請をします。

 法務局HPをご覧ください。

 東京法務局後見登録課HPをご覧ください。

 

 ■ (任意後見支援信託)

Q8 任意後見契約を結んでいる場合,委任者が財産を信託銀行に信託して管理するということができますか。

A8 任意後見制度支援信託という商品を出している信託銀行もあります。

 一例を紹介します。 信託銀行HPをご覧ください。