家族信託

① 負担付遺言と遺言信託

Q1 不動産賃貸をしているの私(父)の死後,障害のある長男の生活が心配です。どうすれば,良いでしょうか。

A1 例えば二男が頼りになる方で長男の世話をしてもらえるなら,不動産を二男に相続させ,その負担として長男に生活資金を渡し世話をしなければならないという,負担付相続の遺言をすること,遺言執行者を他の親族にして二男に負担をちゃんと行わせるようにしてもらうことなどが考えられます。ただ,二男が早く死亡すると,長男の世話をする人がなくなります。

 

A1の2 そこで,貴方を委託者,長男を受益者,二男を当初受託者,二男死亡後の第2次受託者を他の親族等,賃貸不動産を信託財産,この不動産を運用して長男の生活・介護・療養・納税等に必要な資金を給付し幸福な生活及び福祉を確保することを信託目的,信託期間を長男の死亡まで,残余財産帰属者を長男の相続人と二男又は第2次受託者とする,遺言信託をすることも一つの方法です。

 

② 跡継ぎ信託

Q1 先祖代々引き継いできた不動産を長男に相続させたいのですが,長男には子供がいません。長男に相続させた後,長男が死亡したら,長男の妻ではなく,子供いる二男に相続させられますか。

A1 通常の遺言では長男から二男への相続をさせることはできません。

 しかし,貴方を委任者,不動産を信託財産,親戚等を受託者,第1次受益者をあなた,第2次受益者を長男,第3次受益者を二男,残余財産帰属者を二男とする信託契約をすること,又は遺言信託をすることが考えられます。

 

③ 信託契約・債務引受契約と任意後見契約の併用

Q1 父は不動産賃貸をしていますが,認知症気味になってきました。私との間での任意後見契約を検討していますが,父の不動産賃貸業の借家人の入替え,修繕等の処理に不安があります。どうすればよいですか。

A1 お父さんと貴方との間で信託契約を締結し,任意後見契約と併用することが考えられます。

 お父さんを委任者・受益者,貴方を受託者,賃貸不動産を信託財産,不動産を運用してお父さんの生活・介護・療養・納税等に必要な資金を給付し幸福な生活及び福祉を確保することを信託目的,信託終了事由をお父さんの死亡,残余財産帰属等をお母さんや貴方とする,信託契約を締結します。そうすると,貴方の下で賃貸不動産を信託目的に従って柔軟かつ能動的に運用しその成果をお父さんに還元することができます。

 また,お父さんに借入金があるときは,貴方が債務を引き受ける契約をし,信託契約の受託者である貴方が借入金の返済をすることも考えられます。

 

Q2 事業承継信託には任意後見契約が不可欠と言う人がいますが,なぜですか。

A2 事業承継信託の場合,取締役である貴方のお父さんが委任者・受益者,貴方が受託者となり,お父さんが貴方に自社株式・事業用不動産等を信託して管理運用を委ねる。お父さんは,本人又は指定する指図権者(N)が貴方に指図をして議決権を行使し,役員の地位を確保し,配当金・役員報酬を受け取る仕組みが考えられます。

 この場合,お父さんが保佐開始の審判を受けると役員の地位を失います。しかし,お父さんがNとの間で任意後見契約を結んでいると,Nが任意後見人となります。任意後見の場合,本人の地位の喪失・権利の制限はないので,お父さんは,取締役会等で解任されない限り,役員の地位を奪われないのです。

 なお,任意後見契約の代理権目録の「財産の管理,保存又は処分に関する事項」には,信託受益権者の信託法92条の監督権(受託者に対する報告請求権,帳簿等の閲覧等請求権,受託者の権限違反行為の取消権等)が含まれていると解されているから,信託契約上,受益者代理人の選任等を定める方がよいという意見もあります。

 

④ 金銭信託等

Q1 お金を信託するとお金等はどうやって管理されますか。

A1 受託者の固有財産と信託財産を明確に分けて管理する必要があります。信託財産であることが分かる「信託口口座」で管理することが理想ですが、これを開設する銀行が少ない状況です。このため、受託者名義の「信託専用口座」で管理することが行われています。でも、この口座には受託者死亡時に凍結され相続預金として処理されるリスクがあるので、信託契約後も「信託口口座」の開設を試みることが必要でしょう。

 信託口口座開設の一例として信託銀行のHPをご覧ください。

 なお、有価証券に関する信託口口座の一例として証券会社のHPをご覧ください。

 

⑤ 税務関連の質問

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