遺 言
①遺言の必要性など
■ (遺言の必要性)
Q1 遺言をした方がよい場合とはどんな場合ですか。
A1 法定相続とは異なる配分をしたい場合には遺言が必要です。法定相続分は「法定相続」をdownload。不動産が唯一の遺産で相続人間での分け方が難しい,子がおらず遺産のすべてを配偶者に遺したい,介護で世話になっている人に遺産を遺したい,事業・農業を特定の者に継承させたい,障害のある子に遺産を遺したい,配偶者と子のほかに前配偶者の子がいて話し合いが難しい,特定の相続人に遺産を遺したくない場合などは,遺言をした方がよいでしょう。
■ (遺産を遺そうと思っていた者の死亡)
Q2 父・長男・長女・長男の子がいます。父が,「特定の遺産を,長男に相続させる」旨の遺言をしましたが,長男が父の死亡以前に亡くなった場合,この遺言によって,長男の子が長男の代わりにこの遺産を相続することができますか。
A2 特段の事情がない限り,そうはなりません。遺言は無効になり,法定相続になって,遺産分割協議をすることになります。しかし,父が,「特定の遺産を,長男に相続させる。長男が父の死亡以前に死亡した場合は,長男に相続させるとした遺産を,長男の子に相続させる。」旨の遺言をすれば,この遺言により遺産分割協議をしなくても,長男の子が長男に代わってこの遺産を取得することができます。
■ (今所有していない物の遺贈)
Q3 お世話になった消防署に救急車を寄付したいのですが,消防署はお金を受け取れないと言っています。遺言で救急車を寄付できますか。
A3 民法996条,997条により,遺言(遺贈)することは可能です。生前救急車を調達できればそれを,調達できなければ相続開始後に遺言執行者に救急車を調達させて消防署に引き渡すように遺言することができます。
■ (嫡出子と非嫡出子)
Q4 婚姻関係にある男女の子(嫡出子)とそうでない子(非嫡出子)とでは,相続分はどうなりますか。
A4 同等です。
②遺言の作成など
Q1 遺言の方式にはどんなものがありますか。
A1 普通方式の遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言があります。
Q2 自筆証書遺言の特徴はなんですか。
A2 遺言者本人が遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書できれば一人で作成できます。遺言者自身で作成するため費用があまりかかりません。遺言者本人の判断で適宜の方法により保管します。相続開始後、相続人等が家庭裁判所に検認を請求する必要があります。法務局による自筆証書遺言書保管制度を利用することができ、この場合、検認は不要です。
自筆証書遺言書保管制度について法務省HPをご覧ください。遺言者が希望すれば、遺言書保管官が戸籍担当部署と連携し遺言者死亡の情報を取得し、遺言者が予め指定する方1名に遺言書の保管を通知します。遺言者は氏名・保管番号記載の保管証を受け取り、家族に遺言書保管を伝えるときはこれを利用すると便利だとされています。
Q3 公正証書遺言の特徴はなんですか。
A3 法律専門家である公証人の関与の下、2名の証人が立ち合って行う遺言で、公証人は、遺言能力や遺言の内容の有効性を確認、遺言内容について助言を行います。財産の価額に応じた手数料がかかります。原本は公証役場に保管され、正本、謄本を交付されます。検認は不要です。
Q4 秘密遺言とはどういうものですか。
A4 遺言者が,遺言を書いた遺言書(ワープロでも,第三者が筆記したものでもよい。)に署名押印し,これを封筒に入れ,遺言書に押した印鑑と同じ印鑑で封印した上,公証人と証人2名の前にその封書を提出し,自己の遺言書であること,その筆者の氏名・住所を言い,公証人が,その封紙上に日付・遺言者が言ったことを記載した後,遺言者・証人2名と共にその封紙に署名押印して作成するものです。検認が必要です。
Q5 遺言公正証書を作成するにはどのような書類が必要ですか。
A5 遺言者の印鑑登録証明書など、必要書類は「必要書類」をdownload。
Q6 目が見えない人,耳が聞こえない人,口がきけない人,手が不自由で文字が書けない人でも遺言を作ることができますか。
A6 公正証書遺言の場合には作成する方法があります。
Q7 相続税のことを教えてください。
A7 税務関連の質問は税務TOPへ。
③遺贈と死因贈与
Q1 遺贈と死因贈与とは,どのような違いがありますか。
A1 遺贈は,遺言によって財産を無償で与えることです。遺言公正証書を作成できます。遺言者自ら遺言することが必要です。15歳になると遺言できます。相手の承諾は不要です。いつでも撤回することができます。受遺者は放棄できます。
死因贈与は,贈与者の死亡によって効力が生じる贈与です。公正証書を作成できます。代理人でも一応可能です。未成年者は法定代理人の同意が必要です。契約であり,受贈者との合意が必要です。贈与者は当然には取り消すことができません。遺贈の放棄の規定は準用されません。不動産の仮登記ができます。
④遺言執行
■ (相続預金の払戻し等)
Q1 夫が,預金を含む遺産の一切を,私(妻)に相続させる,私を遺言執行者とするという遺言公正証書を遺して亡くなりました。金融機関に対して相続預金の払戻しを請求するにはどうしたらよいですか。
A1 遺言執行者は預金の払戻し請求、預金契約の解約の申入れをすることができます。金融機関は,手続に被相続人の戸籍・除籍謄本,相続人全員の戸籍謄本,通帳・届出印,所定の死亡届,遺言公正証書の正本又は謄本を要求しているようです。
Q2 遺言執行者はどのようなことをするのですか。
A2 遺言の内容を実現します。執行者に関する「民法の規定の抜粋」をメモしました。 銀行の手続の例として三井住友銀行の「遺言執行者さまがお手続きされる場合」をリンクしました。参考にしてください。
⑤相続の放棄
Q1 私(子)は父が生きているうちに父の相続について放棄しようと考えていますが,どうすればよいですか。
A1 相続の放棄は,相続開始前にはできません。相続開始前に,「私は相続を放棄します。遺産は一切要求しません。」旨の念書を書いても無効です。相続の放棄は,相続開始後に家庭裁判所に申し立てなければなりません。
Q2 私(子)が相続の放棄をしたとき、私の子(孫)が代襲相続しますか。
A2 子が生きており相続の放棄をしたとき、同人の子(孫)への代襲相続は起きません。
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⑥遺留分
Q1 私(子)は,父から遺留分放棄をするよう言われ応じようと思います。どのような手続が必要ですか。
A1 相続開始前であれば,家庭裁判所で遺留分放棄許可の審判を受ける必要があります。相続開始後であれば,遺留分放棄書を他の相続人宛てに送付します。なお,被相続人の死亡時にある遺言の対象とされなかった財産については,相続人として分割請求ができます。
Q2 遺留分放棄後,私(子)が父より先に死んだら遺留分はどうなりますか。
A2 被代襲者(子)の遺留分放棄の効果は代襲者(孫)にも及び,遺留分侵害額請求はできないと考えられます。
Q3 父が,唯一の財産である不動産を兄に相続させるとの遺言を遺して亡くなりました。私(弟)が遺留分侵害額請求をするにはどうしたらよいですか。
A3 被相続人の死亡後,相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈のあったことを知った時から1年,相続開始から10年以内に,内容証明郵便や訴訟提起などし日付が確定できる方法で,他の相続人,遺贈・贈与を受けた人に対し,遺留分侵害額請求の通知をします。
Q4 遺言に従い,父の唯一の資産である不動産を相続し,登記を完了したところ,弟が遺留分を主張してきましたが,私(兄)はどうすればよいですか。
A4 時効期間が経過していれば消滅時効を援用します。弟の遺贈又は過去の贈与を計算し,それが遺留分に満ちていることを主張します。
Q5 遺留分に関する民法の特例があると聞きましたが、どういうものですか。
A5 経営承継円滑化法による民法の特例のことと思います。①遺留分の除外特例、②遺留分の固定特例があります。詳細については遺留分に関する民法の特例をご覧ください。
⑦遺産分割協議(法定相続の場合)
Q1 遺産分割協議に際して公正証書を活用することがありますか。
A1 法律的に問題の起こらない条項にしたい,その後の代償金の支払,相続分譲渡の代金の支払について執行力をつけたいことから公正証書を作成することがあります。
Q2 代償金の支払とはどういうケースですか。
A2 例えば,相続人甲・乙がおり,甲が遺産の土地を取得し,甲が土地を取得することの代償として乙にお金を分割で支払うことにした場合,甲がその支払を怠ったときは強制執行に服する旨の公正証書を作成するような場合です。
Q3 相続分譲渡の代金の支払とはどういうケースですか。
A3 例えば,相続人甲・乙・丙がおり,甲が乙に自己の相続分を譲渡し,当事者の立場から脱退する場合があります。甲が遺産の取得や協議への参加を希望しない,遺産取得は希望するが協議の終了を待てず早期に対価を取得することを希望する場合などに,相続分の譲渡の制度が活用されます。そして,相続分の譲渡が有償の場合,QA2と同様に,その代金の支払について公正証書を作成するような場合です。
Q4 相続人の一人が外国に住んでいるため,委任状を作成して遺産分割に関する公正証書を作成したのですが,どうしたらよいでしょうか。
A4 委任状には,日本における印鑑登録証明書の代わりに,在外公館において署名証明をとって委任状につけて下さい。なお、在留証明もとれます。
詳細は、外務省HPをご覧ください。
⑧ 遺言検索
Q1 亡くなった人が遺言を作成しているかどうか調べられますか。
A1 公正証書遺言、法務局保管の遺言書について、遺言者の死亡後に調べることができます。
⑨ 法定相続情報証明制度
Q1 法定相続情報証明制度について教えてください。
A1 法務局で登記官が法定相続情報一覧図に認証文を付した写しの交付をします。
詳細は、法務局HPをご覧ください。