遺 言

①遺言公正証書の作成

■ (相談)

Q1 遺言の相談をしたいのですが,足が不自由で外出が困難です。どうしたらよいですか。

A1 とりあえずは代理の方が役場に来て相談されるのでもよいですが,遺言者本人が公証人に直接意思を説明することが大切です。遺言者が自分のどの財産を誰に遺したのかをメモにまとめてみて,そのメモを代理の方に預けるのもよいでしょう。

 

Q2 遺言するのにはどのような書類が必要ですか。

A2 遺言者の印鑑登録証明書,戸籍謄本,固定資産評価証明書などが必要です。

   必要書類は「必要書類」をdownload。

 

Q3 遺言公正証書を作成するのにどのくらい日時がかかりますか。

A3 遺言内容が明確で,必要書類が整っていれば,単純な内容なら数日で原稿を書いてお渡しできると思います。その原稿内容を確認・修正していただき,内容が決まれば,遺言者・証人の日時の調整がつき次第遺言公正証書を作成することができます。

 

Q4 遺言者が病気の場合,出張していただけますか。

A4 東京都内であれば,出張することができます。ただし,遺言者がちゃんと意思表示ができないと遺言公正証書を作成できませんから,状態を教えてください。主治医の意見も確認してください。

 

Q5 目が見えない人,耳が聞こえない人,口がきけない人,手が不自由で文字が書けない人でも遺言公正証書を作ることができますか。

A5 身体に障害がある方でも,その状態によって作成する方法がありますので,ご相談ください。例えば,病気のため口がきけなくなった方でも,自ら書いて意思表示できる方は,公正証書遺言を作成することができます。

 

Q6 手数料はどのくらいかかりますか。

A6 遺言公正証書作成に関するご相談は無料です。

   証書作成の手数料は,遺産を取得する方の数,取得する遺産の評価額などによって異なりますから,遺言内容が確定しないと手数料が計算できません。遺言の原稿ができた段階で計算をして手数料を連絡いたします。

   例えば,①総額1億円を,配偶者に全部相続させる場合,5万4000円に証書代等を加えた金額,②配偶者に6000万円を,子に4000万円を相続させる場合,8万3000円に証書代等を加えた金額です。

 

Q7 遺言についての秘密は保たれますか。

A7 秘密は保たれます。

   公証人は取り扱った事件について守秘義務を負っており,法務大臣の監督を受けることとされ,職務上の義務に違反した場合は懲戒処分を受けます。書記は就業規則によって守秘義務を負っており,違反した場合は懲戒処分を受けます。証人は民法上の守秘義務があると考えられています。

 

Q8 遺言公正証書を作成した後はどういう手続になるのですか。

A8 遺言公正証書原本を作成すると,原本は半永久的に公証役場に保管します。

   遺言者には遺言公正証書の正本1通と謄本1通をお渡しします。

   謄本は遺言者の手元に置いて遺言内容の確認に使用し,正本は時期をみて遺言執行者に渡して遺言執行に使用してもらうよう,お勧めしています。

   ただし,謄本でも遺言執行することはできます。

   なお,正本も謄本も原本の写しという意味で,公証人が作成する書類です。

 

Q9 遺言者が死亡したとき,相続人は公証役場に連絡するのですか。

A9 連絡の必要はありません。相続人や遺言執行者が,正本等を使って,遺言の内容に従い,不動産登記手続や預金の名義変更などをすることになります。

   正本・謄本が滅失したため遺言執行ができないときなどは,相続人等の請求により,公証人が謄本を作成してお渡しすることができます。

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②遺言の必要性など

■ (遺言の必要性)

Q1 遺言をした方がよい場合とはどんな場合ですか。

A1 法定相続とは異なる配分をしたい場合には遺言が必要です。

   法定相続分は「法定相続」をdownload。

   不動産が唯一の遺産で相続人間での分け方が難しい,子がおらず遺産のすべてを配偶者に遺したい,介護で世話になっている人に遺産を遺したい,事業・農業を特定の者に継承させたい,障害のある子に遺産を遺したい,配偶者と子のほかに前配偶者の子がいて話し合いが難しい,特定の相続人に遺産を遺したくない場合などは,遺言をした方がよいでしょう。

 

 

■ (嫡出子と非嫡出子)

Q2 婚姻関係にある男女の子(嫡出子)とそうでない子(非嫡出子)とでは,相続分はどうなりますか。

A2 平成25年12月5日,民法の改正により,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました。改正法は平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます。

 

■ (遺産を遺そうと思っていた者の死亡)

Q3 父・長男・長女・長男の子がいます。

   父が,「特定の遺産を,長男に相続させる」旨の遺言をしましたが,長男が父の死亡以前に亡くなった場合,この遺言によって,長男の子が長男の代わりにこの遺産を相続することができますか。

A3 特段の事情がない限り,そうはなりません。遺言は無効になり,法定相続になって,遺産分割協議をすることになります。

   しかし,父が,「特定の遺産を,長男に相続させる。長男が父の死亡以前に死亡した場合は,長男に相続させるとした遺産を,長男の子に相続させる。」旨の遺言をすれば,この遺言により遺産分割協議をしなくても,長男の子が長男に代わってこの遺産を取得することができます。 

 

■ (今所有していない物の遺贈)

Q4 お世話になった消防署に救急車を寄付したいのですが,消防署はお金を受け取れないと言っています。遺言で救急車を寄付できますか。

A4 民法996条,997条により,遺言(遺贈)することは可能です。生前救急車を調達できればそれを,調達できなければ,相続開始後に遺言執行者に救急車を調達させて消防署に引き渡すように遺言することができます。 

③秘密遺言

■ (秘密遺言)

Q1 秘密遺言とはどういうものですか。

A1 遺言者が,遺言を書いた遺言書(ワープロでも,第三者が筆記したものでもよい。)に

   署名押印し,これを封筒に入れ,遺言書に押した印鑑と同じ印鑑で封印した上,公証人と証人2名の前にその封書を提出し,自己の遺言書であること,その筆者の氏名・住所を言い,公証人が,その封紙上に日付・遺言者が言ったことを記載した後,遺言者・証人2名と共にその封紙に署名押印して作成するものです。

 

Q2 秘密遺言証書に検認が必要ですか。

A2 必要です。この遺言書を発見した人は家庭裁判所に届け出て検認手続を受けなければなりません。

 

Q3 手数料はどのくらいかかりますか。

A3 1万1000円です。. 

④遺贈と死因贈与

■ (遺贈と死因贈与)

Q1 遺贈と死因贈与とは,どのような違いがありますか。

A1 遺贈は,遺言によって財産を無償で与えることです。遺言公正証書を作成できます。遺言者自ら遺言することが必要です。15歳になると遺言できます。相手の承諾は不要です。いつでも撤回することができます。受遺者は放棄できます。

   なお,相続人に対する遺贈もできますが,この場合「相続させる遺言」をするのが通常です。

   死因贈与は,贈与者の死亡によって効力が生じる贈与です。公正証書を作成できます。代理人でも一応可能です。未成年者は法定代理人の同意が必要です。契約であり,受贈者との合意が必要です。

   贈与者は当然には取り消すことができません。遺贈の放棄の規定は準用されません。不動産の仮登記ができます。

 

⑤遺言執行

 (相続預金の払戻し等)

Q1 夫が,預金を含む遺産の一切を,私(妻)に相続させる,私を遺言執行者とするという遺言公正証書を遺して亡くなりました。金融機関に対して相続預金の払戻しを請求するにはどうしたらよいですか。

A1 以前は,金融機関は遺留分等の紛争に巻き込まれることをおそれて相続人全員の保証を求める手続を要求していたようです。

   しかし,遺言執行者の権限は排他的であり,相続人の承諾を要しません。金融機関としても,遺言執行者からの払戻請求訴訟を提起されれば拒むすべはありません。銀行が公正証書遺言により選任された遺言執行者よりの預金債権の払戻請求を拒絶したことが違法であるとした判決もあります。現在では,払戻しに応じているようですが一部には相続人の念書を求める所もあるようですから,金融機関に確認した方がよいでしょう。

   なお,通常,金融機関は,手続に被相続人の戸籍・除籍謄本,相続人全員の戸籍謄本,通帳・届出印,所定の死亡届,遺言公正証書の正本又は謄本を要求しているようです。

 

Q2 相続した不動産の登記手続はどうしたらよいですか。

A2 法務局又は司法書士の先生に相談してください。

   東京司法書士会の次のホームページをご覧ください。

   http://www.shihoshoshi-soudancenter.jp/をclick。

⑥遺言検索

■ (遺言検索)

Q1 亡くなった親が遺言書を作成していたかどうか調べられますか。

A1 平成元年(昭和64年1月1日)以降に作成された公正証書遺言は,どの役場でも検索することができます。

   しかし,それ以前に作成された公正証書遺言は,作成した役場でないと検索できません。

   検索を依頼できる方は,遺言者又は相続人等に限定されています。

   遺言検索の必要書類等は「遺言検索」をdownload。

 

Q2 私は相続人ではないのですが,亡くなった人が私に遺産をくれるという遺言をしている可能性があると思います。遺言検索をしていただけますか。

A2 そう思うというだけでは応じられません。自己が受遺者であることを証明できなければ,遺言検索にも公正証書遺言の謄本交付請求にも応じられません。プライバシーを守るために慎重な判断をします。相談は,遺言者が遺言を作成したと思われる公証役場にするべきでしょう。

 

Q3 成年後見人は生存中の被後見人の遺言の検索を依頼することができますか。

A3 この場合は,遺言検索及び遺言公正証書謄本の交付請求に応ずることはできません。

 

Q4 電話で遺言検索を依頼し,遺言がなかったら結果を電話連絡してもらうことはできますか。

A4 電話での照会に応ずることはできません。

 

Q5 手数料はどのくらいかかりますか。

A5 検索は無料です。遺言公正証書の謄本請求をする場合は,手数料がかかります。

⑦相続の放棄

■ (相続の放棄)

Q1 私(子)は父が生きているうちに父の相続について放棄しようと考えていますが,どうすればよいですか。

A1 相続の放棄は,相続開始前にはできません。相続開始前に,「私は相続を放棄します。遺産は一切要求しません。」旨の念書を書いても無効です。

   相続の放棄は,相続開始後に家庭裁判所に申し立てなければなりません。.

⑧遺留分

■ (遺留分)

Q1 私(子)は,父から遺留分放棄をするよう言われ応じようと思います。どのような手続が必要ですか。

A1 相続開始前であれば,家庭裁判所で遺留分放棄許可の審判を受ける必要があります。

   相続開始であれば,遺留分放棄書を他の相続人宛てに送付します。

   なお,被相続人の死亡時にある遺言の対象とされなかった財産については,相続人として分割請求ができます。

 

Q2 遺留分放棄後,私(子)が父より先に死んだら遺留分はどうなりますか。

A2 被代襲者(子)の遺留分放棄の効果は代襲者(孫)にも及び,遺留分侵害額請求はできないと考えられます。

 

Q3 父が,唯一の財産である不動産を兄に相続させるとの遺言を遺して亡くなりました。私(弟)が遺留分侵害額請求をするにはどうしたらよいですか。

A3 被相続人の死亡後,相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈のあったことを知った時から1年,相続開始から10年以内に,内容証明郵便や訴訟提起などし日付が確定できる方法で,他の相続人,遺贈・贈与を受けた人に対し,遺留分侵害額請求の通知をします。

 

Q4 遺言に従い,父の唯一の資産である不動産を相続し,登記を完了したところ,弟が遺留分を主張してきましたが,私(兄)はどうすればよいですか。

A4 時効期間が経過していれば消滅時効を援用します。

   弟の遺贈又は過去の贈与を計算し,それが遺留分に満ちていることを主張します。

 

⑨遺産分割協議(法定相続の場合)

 (遺産分割協議)

Q1 遺産分割協議に際して公正証書を活用することがありますか。

A1 遺産分割協議書は共同相続人の当事者だけで作ることができますが,法律的に問題の起こらない条項にしたい,①特に,その後の代償金の支払,②相続分譲渡の代金の支払について,執行力をつけたいということなどから,公正証書を作成することがあります。

 

Q2 ①代償金の支払とはどういうケースですか。

A2 例えば,相続人甲・乙がおり,甲が遺産の土地を取得し,甲が土地を取得することの代償として乙にお金を分割で支払うことにした場合,甲がその支払を怠ったときは強制執行に服する旨の公正証書を作成するような場合です。

 

Q3 ②相続分譲渡の代金の支払とはどういうケースですか。

A3 例えば,相続人甲・乙・丙がおり,甲が乙に自己の相続分を譲渡し,当事者の立場から脱退する場合があります。甲が遺産の取得や協議への参加を希望しない,遺産取得は希望するが協議の終了を待てず早期に対価を取得することを希望する場合などに,相続分の譲渡の制度が活用されます。

   そして,相続分の譲渡が有償の場合,Q2と同様に,その代金の支払について公正証書を作成するような場合です。

 

Q4 相続人の一人が外国に住んでいるため,委任状を作成して遺産分割に関する公正証書を作成したのですが,どうしたらよいでしょうか。

A4 委任状には,日本における印鑑登録証明書の代わりに,在外公館において署名証明をとって委任状につけて下さい。

   外務省のホームページ

   http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000554.html#2-2をご覧ください。