任意後見

①任意後見契約

■ (相談)

Q1 今はしっかりしていますが,歳をとって身体に自信がなくなり,認知症も心配になるので,親戚の人に生活の援助をしてもらいたいときには,どうしたらよいですか。

A1 任意後見契約を結ぶことが考えられます。

   この契約は公正証書で取り交わさなければならないので,親戚の方と一緒に役場にお越しください。

 

Q2 任意後見契約とは,どんな契約ですか。

A2 本人が信頼できる方を見つけ,その方との間で,もし本人の判断能力が衰えてきた場合には,本人に代わって,本人の財産を管理したり,必要な契約を結んだりしてくださいとお願いし,これを引き受けてもらう契約です。

   本人の判断能力が衰えた状態になったとき,引き受けた方は,本人の同意を得て,家庭裁判所に後見監督人の選任を申請し,後見監督人が選任されたときから,任意後見人として仕事をすることになります。

 

Q3 任意後見契約に必要な書類はどんなものですか。

A3 本人(委任者)の印鑑登録証明書,実印,戸籍謄本,住民票,引き受ける方(受任者)の印鑑登録証明書,実印,住民票です。

 

Q4 手数料はどのくらいかかりますか。

A4 1万5000円に証書代を加えた金額です。

   任意後見契約に必要な書類及び費用等は「任意後見」をdownload。

 

Q5 本人(委任者)が病気などで公証役場に行けない場合,どうしたらいいですか。

A5 公証人は,原則として本人と面接しなければならないことになっています。本人が,代理人を選任して契約することはできません。東京都内なら本人宅や病院に当役場の公証人が出張して面接し公正証書を作成することができます。

   なお,本人に判断能力があることが必要ですから,必要なら,医師に確認して診断書をとるなどしてください。

   また,日本語が分からない方の場合,耳が聞こえない方や口がきけない方など言葉が発せられない方で文字が分からない方の場合,通訳人(通事)を立ち会わせなければなりません。依頼者が通訳人を依頼することになっています。目が見えない方又は文字が分からない方の場合は,立会人を立ち会わせなければなりません。

 

■ (遺言との関係)

Q6 知らないうちに母が別の兄弟と任意後見契約を結んでいました。母が亡くなった場合には母の遺産は任意後見人になっている兄弟がすべて取るのですか。

A6 遺産の相続と任意後見契約とは関係ありません。遺言がなければ,法定相続になります。

 

Q7 母の任意後見人になりました。母の代理人となって母の遺言を変更することができますか。

A7 遺言は,本人しかできません。任意後見人が本人の遺言を変更することはできません。

 

②委任契約+任意後見契約(移行型)

  (委任契約の相談)

Q1 本人の判断能力はあるが,身体が悪くなり,車椅子の生活になった場合,任意後見人に財産管理をしてもらえないのですか。

A1 その状態では,任意後見人は仕事をできません。

   その状態の場合,委任契約を結んで,財産管理をお願いすることができ,任意後見契約と一緒に委任契を結ぶことができます。この契約を移行型任意後見契約と言います。

 

Q2 委任する事項は,財産管理全般ですか。

A2 本人の判断能力が不十分な状態になったときとは違いますから,委任の範囲は限定できます。

   銀行との預金取引を特定口座に限定したり,重要な財産の処分,保険会社との契約,証券会社との契約を委任の内容から排除することなどが考えられます。

 

Q3 委任契約の効力発生時期はいつですか。

A3 契約締結と同時に効力が発生する契約だけなく,本人(委任者)が引き受けた方(受任者)に通知したときから効力が発生する契約もあります。

 

Q4 引き受ける人は一人ですか。

A4 複数の人に引き受けてもらうことができます。複数が同時に又は順次契約することができます。複数の人が各人単独で仕事ができますが,共同でしなければならないとする契約もできます。第一次的にAが引き受け,第二次的にAの都合が悪くなったときはBが引き受けるという契約はできません。

 

Q5 手数料はどのくらいかかりますか。

A5 任意後見契約の手数料に委任契約の手数料と証書代を加えた金額です。

   委任契約の手数料はその報酬額によって異なります。無償の場合は1万1000円になります。

 

Q6 移行型の第1段階の委任契約の委任事項の例を教えてください。

A6 財産の処分を除外した例を紹介します。

   代理権目録(委任契約)をdownload。

   預金取引を限定し,証券会社・保険会社との取引を除外することも考えられます。

 

Q7 移行型の第2段階の任意後見契約の委任事項の例を教えてください。

A7 一例を紹介します。

   代理権目録(任意後見契約)をdownload。

   A6,A7の例のほか,委任契約と任意後見契約の代理権目録を同じ内容にした上,重要な財産の処分に関しては,委任者又は任意後見監督人の同意を要する,という制限を設ける例もあります。

 

Q8 移行型契約の委任事項以外の内容の例を教えてください。

A8 一例を紹介します。

   移行型(委任契約+任意後見契約)をdownload。

   任意後見契約について,重要な財産の処分に関しては,任意後見監督人の同意を要するという制限を設けた例です。

 

 (土地建物の売買)

Q9 母は高齢で身体が不自由になっていますが,判断能力はあります。母が,母名義の土地建物を売って老人ホームに入りたいと言っていますが,移行型任意後見契約をすればよいのですか。

A9 移行型任意後見契約の委任契約では,不動産等重要な財産の処分を権限から除外したり,処分を含む場合も本人の事前の書面による同意を要するという制約をつけることが多いでしょう。

   特定の土地建物の売却については,本人が具体的な売却内容について,委任状・委任契約書(公正証書)・同意書を作成することになると思います。

 

③留意点

 (留意点)

Q1 任意後見契約公正証書を作っていただきましたが,この契約について頭に入れておかなければならないことがありますか。

A2 任意後見監督人が選任されない場合がありますし,解除や登記に関しての留意点があります。

  留意点は「留意点メモ」をdownload。

 

■ (金融機関との対応)

Q3 任意後見人が金融機関で円滑に事務を行うにはどうすればよいですか。

A3 金融機関への任意後見開始の届出が必要です。金融機関では届出の定型書式を用意しています。届出には任意後見登記事項証明書の提出も求められています。

 

Q4 移行型(委任契約+任意後見契約)の委任契約の受任者(代理人)が金融機関で円滑に事務を行うにはどうすればよいですか。

A4 移行型の委任契約に当たっても代理人等を要求している金融機関がありますので,確認が必要です。早めに取引銀行に赴き,受任者に代理権限があり,交渉する権限があることの理解を得ておくと円滑にことを進ませることができます。

   委任契約の代理権目録に金融機関名を記載することも有効です。任意後見登記事項証明書を提出し,委任契約が継続していることを明らかにすることも有効です。

 

■ (解除)

Q5 移行型任意後見契約を解除する場合どうするのですか。

A5 委任契約の段階・任意後見監督人選任前の段階で解除する場合,一方的解除と合意解除の場合がありますが,これらは,公証人の認証のある書面によって解除することになっています。

   解除合意書の例は「WORD」をdownload。

   一方的解除は内容証明郵便によって相手方に通知し,配達証明を得ます。

   解除通知書の例は「WORD」をdownload。

   内容証明郵便,配達証明については次のホームページ

   http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/

   http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/haitatsu/をご覧ください。

   解除後,終了の登記申請をすることになります。

   登記申請については次のホームページ

   http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000465.htmlをご覧ください。

 

Q6 任意後見監督人選任後に任意後見契約を解除する場合はどうするのですか。

A6 家庭裁判所の許可が必要です。

 

■ (任意後見監督人の選任)

Q7 任意後見監督人の選任の申立てはどうすればよいですか。

A7 委任者の判断能力が不十分となったら,受任者は,その旨の診断書を添えて,委任者の住所地を管轄する家庭裁判所へ任意後見監督人選任申立書を提出します。

   裁判所のホームページ

   http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_04/をご覧ください。

 

■ (登記関係)

Q8 登記の手続について教えてください。

A8 本人・任意後見人の氏名,住所,本籍等に変更があった場合,変更の登記の申請をします。

  任意後見契約を解除した場合,任意後見監督人選任の前後を問わず,終了の登記の申請をします。

   法務局のホームページ

   http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/category_00006.htmlをご覧ください。

 

④死後事務委任

■ (死後事務委任の相談)

Q1 委任契約の受任者や任意後見人に,葬儀,火葬,埋葬,公租公課・公共料金・介護費用・入院費用等の支払や遺産の整理等,本人の死後のことを行ってもらうことはできますか。

A1 委任契約・任意後見契約は本人の死亡により終了しますから,やってもらうことはできませんが,死後事務委任契約を結んでおけば,やってもらうことができます。

   これは遺産の管理をすることではありません。

 

Q2 死後事務委任契約の例を教えてください。

A2 一例を紹介します。

   死後事務委死任契約をdownload。

 

Q3 死後事務委任契約だけを締結することはできますか。

A3 できます。

 ただし,戸籍法87条2項により任意後見人は死亡届をすることができますが,死後事務委任契約だけを締結した受任者は任意後見人ではないので死亡届をすることはできないことになります。